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ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

Rio Grande15


「アナタは不法移民を認めるんですか。彼らを時給200ペソで絞ることを認めるんですか。

そんなのは、ただの都合のいい奴隷政策だ」

庶民を討論へ巻き込み、盛り上げて、誘導していく、ヒランプ政権の新しい手法だ。

もうスターウォーズ計画のような、上がデカいものを一方的にブチあげて引っ張っていくフェーズは過ぎていた。時代は、チンケになり始めている。

チンケと見せかけて、もちろん背後では壮大な投資が地下進行中だ。ライバル連中に、公然とパクられない為に。電子マネーとかビックデータとかAIとか。

「時給200ペソが、気に障るなら、取り締まりたかったら、取り締まればいい。

零細の事業主たちが、どう思うかは知らないよ。

このカードを導入すると、何しろ時給200ペソで絞ったことすら記録に残るんだからな。あとは俺たちの裁量次第だよ」

これまで不法移民を使ってきた中小の事業主たちが、ザワついた。

時給200ペソとか、事業主のタチ悪いとか、労災が無いとか、全てが記録に残り、そういうことがバレると人が集まらない。

それでもメキシコよりマシという移民は、次から次へと湧いてくるから良いが、ヒランプ大統領は新規の不法移民の流れを止めた。

もちろんインターネットでそういう情報はすぐに広まるが、貧しいメキシコ移民がインターネットを活用することはあまりない。

ハックマンは珍しく、共和党の集会に出た。ギャラが出たからだ。

ヒランプは、こういうことに関して、気前がよかった。バラまくところで思いっきりバラまいて、大いに人の気を惹き、締めるところは締める。

ハックマンはいつもなら、こんなクソみたいな集まりには出ない。

彼は集団行動が好きではない。共和党は民主党よりマシだが、アメリカの民主主義もあまり信じていなかった。偽善者の集まり。

だけど、今日は、似たようなクソな肉屋や農家が多いという。メキを絞り、貧しい生活を送り、妻子に逃げられた。か、どうかは、知らないが、とりあえず他人とは思えない。

ハックマンは慣れない正装をして、壇上へ上がった。

「私はずっと不法移民を使っていました。が、私の時給だって換算してみれば、似たようなものだったんです。

16時間肉を切り、帳簿をつけて、汚いマットレスで寝るだけでした。

いつも役所の摘発に、怯えていました。タチの悪い役人連中に、飲み食いをさせることもありました。

職業斡旋所に行ったほうが、良い生活ができると思います。

私たちはアメリカ市民で、最低賃金以下で絞られることはまずないからです」

 

 

 

 

 

アドリアナはカントリー牧場を、娘の職場環境の偵察という理由で、タダで見学することは断られた代わりに、仕事を終えた後のアリシアと、アリシアの先輩のアンソニーで、ランチハウスでステーキを食べた。

ステーキ、慣れない代物だ。それも、自分たちの切っていた安い肉とは違う。

食事は極上だが、アドリアナの娘の口から出てきた話はとんでもなかった。

「そんなオッサンと一緒に暮らすですって?出て行ったパパと同じくらいの年よ」

早くも駄目出しを食らったアンソニーは落ち込んだ。

アリシアと母親は良く似ていて、やっぱり綺麗だ。どちらかといったら彼女とつきあうくらいが、アンソニーにとっては自然な歳だった。

っていうか、俺は何を考えているのか。その母親でさえ高値の花の感じがするのに、娘のアリシアは自分には贅沢過ぎた。仕方がない。

「ママ、考えてみて。何しろ、家賃がタダよ。アメリカ市民が側にいてくれるのは、心強いし。

カントリー牧場はいいところだけど、いつクビになるか分からないし、

私はまだアメリカの生活で分からないことが多い」

アドリアナが考え込む顔つきになった。

アリシアが自分とつきあう理由として挙げられた全てが、生活の利便性であることに、アンソニーはまたもや落ち込んだ。

でも、それってしょうがなくない?何しろ俺はただのオッサンなんだし。アリシアに懐いてもらっただけで幸せだ。

一緒に住んでも良いと思われる程度には。

アリシアが突然、クスッと笑った。

「お母さん、入管の人と、つきあってるんでしょう。

アンソニーのこと、その人に人相見してもらわない。

16歳のメキシコ娘が、つきあっても大丈夫な、信頼できる男かどうかって。入管の人はきっと、毎日、多くのメキを見ているのよ。犯罪者から真面目な労働者までいるの。

アンソニーはメキじゃないけど、世の中、悪い奴の顔なんて、似たようなものよ」

 

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