ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

オアシスは少ない1

 

中東の地、リビアで、平和の祈り、が政権を取った。

砂漠に点在する、ヤシの実とオアシスの街。

ある日の昼下がり、中心街のショッピングモールに強盗が押し入り、銃撃戦になった。

ガラス張りのショーウィンドウが飛び散り、店内は大混乱に陥った。

ガラスの破片が床一面、真昼の太陽を反射する中に、厚底ブーツをはいた特殊部隊が突入した。

犯人は全員射殺したが、警官側に、20人の犠牲者が出た。

それでも、民間人が10人ほど死んだ。

住人たちは、一斉に警察を非難した。

特に、平和の祈りの活動家は、

犯人を射殺するのは残虐で、生け捕りにして裁判を受けさせるべきだったとか、10人の民間人の犠牲を出したのは、特殊部隊の失策だと糾弾した。

警察署は、人殺し、ペスト、などの落書きで埋まり、

巡査がパトロールをしていると、「クソ警察が。せいぜい俺たち市民の為に死ねよ」と捨てゼリフを吐かれた。

 

 

 

 

ビッチ、お前は死刑だ!

訓練所の壁はスプレーアートで埋まっていた。

20年前ほど前に、平和の祈りが政権を取って以来、

警察官や軍人は、宗教上、底辺の職とされていた。肉体能力を公に行使することは、不浄と見なされた。

が、マチズモは、ひそかに人気があって、この手の組織、いわゆる暴力装置の、人手は払底しなかった。

シャワールームで前を隠さなかったり、同僚に力瘤を見せつけることは、世間から白眼視されていればいるほど、仲間内で盛り上がった。

規律がうるさく、清潔好きの警察には珍しく、訓練所のスプレーアートは野放しにされていた。

そこだけ見れば、ギャングの住むスラムと変わらなかった。

スプレーアートは、幹部たちの心の叫びの代弁でもあり、消そうという人がいなかった。

どうせ、誰も読まないし。

末端の兵士たちが、どういう生活をしてるかなんて、いちいちメディアは取材に来ない。

人々も、あまり知りたくなかった。

だから、これらの組織では、たまに、訓練のマズさや内部風紀の悪さで、自殺者が出て騒がれたが、

そもそも警察なんか入るから悪いんじゃないの、サドマゾ趣味か、と人々に思われて、大した騒ぎにならずに終息していた。

 

 

 

 

 

沢山の小さな白い頭と黒い頭が、並んでいた。

ここで教えていることは普通の公立学校と同じだが、この地域の人たちは、吹き荒れる砂嵐を避ける意味合いもあって、ベールを常用した。

生徒たちは、女子は黒のベールを、男子は白のベールをかぶって、机を並べていた。

マリクは、学校でたまにイジメにあっていた。イジメというか、イジリというのか。

マリクはコーランの詠唱がトロいし、チームスポーツでもドジが多い。

いくらベールをかぶって、互いの区別がつきにくいとはいえ、動きの鈍さなどはいかんともしがたい。

昼休みに、生徒たちは、ふざけ半分で、マリクの白いベールをむしり取って、半裸にした。

神への反逆!ビッチ!

白のベールの男子も、黒のベールの女子も、揃って、ベールを取られたマリクをはやし立てた。

先生が飛んできて、大騒ぎになった。

 

「ビッチ、元気だしなよ」

とぼとぼと歩いていたマリクが振り向くと、黒いベールを着た女子が後ろを歩いていた。

家の方向が一緒で、たまに一緒に帰っているヤスミンだった。

「ビッチとか言うなら、どっか行ってくれよ」

マリクは、顔が見えない位に、白いベールを目元に引き寄せて、深くかぶった。自分が他の誰にも見えないように。

「そんな布は被らなくていいと思うのよ」

マリクは、自分の頭を覆っている黒のベールを払って、顔を出した。黒髪が流れ、目鼻立ちのはっきりしたヤスミンの顔が、彼の視線を奪った。

「マリクの裸は、悪くないと思う。みんな、本当は見たかったから、ああいうことしたんだよ。みんな、ベールを被って自分の顔を隠すことに飽き飽きしてる」

マリクは絶句した。こいつの言うことは、神への冒涜だ。

「知ってる?警察や軍隊ではみんな、寮内を、タンクトップ一枚で歩いてるの。それで、腕の力瘤を競い合うのよ」

「お前は、何かアレなの、反体制なの?」

「私は思ったことを言っただけジャン」

2人のそばを、通行人が通り掛かり、ヤスミンは慌ててめくった自分のベールを元に戻す。

 

広告を非表示にする