ちきうアネクドート

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オアシスは少ない3

 

ナワルは、世間から白眼視され、生活苦に陥ったのを悔やんでいたが、

主観的には不幸と言う感じでもなかった。

彼女は、掘立小屋で長衣にくるまって眠っているときは、夢の中で

ヘリに救助されて、レンジャーの男と空を飛んでいた。

ナワルがいつもの夢から覚めて、乞食の日常を朝からスタートさせた日、

ジーパン姿の欧米のジャーナリストが、彼女の掘立小屋を訪れた。

ナワルが欧米へ渡り、彼女のインタビューに応じたり、素肌を見せる広告へ出ると、生活の保証とビザが出る。

ジーパンの女性はそう言った。

ナワルは、警戒して、黒いブルカを引きよせた。

「ビザなんか、なかなか出ないです。

ここで欧米向けのチケットは、とても頭の良い人が、一生懸命大学で勉強して、やっと取れるんです。

私は、たまたまニュースに出ただけです。あなたの話は怪しい」

「私たちは、あなたのイメージで一生食っていけると思ってます。

言葉は悪いんですが、それがビザの根拠です。

女性の生き方は、私たちの社会で、常に注目を浴びてます。

地球人口の半分は女性ですから」

レンジャー部隊に助けられただけで、女性の生き方もクソもあるものか、とナワルは思ったが、

このままここで乞食をやっていても未来がなかった。

ジーパンの女性の手を取るしかない。

 

 

 

 

「イルハムは、格好良いよね」
「っていうか、あんなの、ヤバくない?」
「イケメンじゃん。将来は、皇太子みたいな顔になるんだよ。叱られているところまで込みで、良いじゃん」
「イルハムは退学になるっていう噂だよ。
イルハムを格好良いとか言った人まで、退学になるかも」
「じゃあ全員退学じゃん」

ヤスミンには、クラスで気になる男子が2人いる。

イルハムと、マリクだ。

普段は規定通り黒いベールを身に着けて通学しているヤスミンは、授業中にマリクと目が合うと、一瞬だけ、ベールを取って見せた。

マリク以外は、誰も見ていない瞬間。

マリクは、すぐに目を逸らした。

マリクをからかって遊ぶのが、子供の頃から、ヤスミンは好きだ。

 

ヤスミンの周りの男子は、頼りないが気の優しいマリクだけではなかった。

授業中にベールを取るとか、ヤバイことを仕出かすのに掛けて、彼女に引けを取らない人は、他にもいた。

それが、イルハムだ。

イルハムはクラスの人気者で、ベールをかぶっていても際立つ、綺麗な顔立ちの男子だった。

おまけに彼は、見せることが禁止されている腕や脚を、長衣の裾からチラ見せして、人の目を惹いた。ベールを取り、綺麗な顔を丸出しにしていることも、よくあった。

「イルハムが脚出してるところの、写メとった」
「どうするの?見つかったら退学じゃない?」
「ネットに上げておいて、こっちは消すの」

 

 

 

「イルハムって、誰と結婚すると思う?」
「イルハムが結婚?何か、ヤバイんじゃないの。アラーの怒りを買いそう」
「何がアラーの怒りを買うか、アンタは分かるの?」
「先生が怒ってるじゃん」
「それか、白人じゃない?彼はイケメンだから、ああやって歩いてたら、観光客にナンパされそうだし」
「そうしたら裸OKなんだ。

欧米には、ああいう人、いるよね。裸になってる人、たくさんいる。イスラム圏では見たことないけど」

「そうなる前に、逮捕されちゃうんじゃないの。肌を出して観光客を誘惑したなんて、マズイよ」

「イルハムが裸で捕まったら、家族も逮捕なのかな。あんなのお兄ちゃんだったら、嫌かも」

「イルハムが裸で捕まるとは決まってないジャン。

素肌を出すのが、イルハムの中で、一時的にマイブームなだけかもしれないじゃん。

30年くらいしたら、髭蔵先生みたいに、髭伸ばしたつまらないオッサンになるかも」

「ワシも若い頃はヤンチャだったもんだ、とか言って?じゃあこの写メは、お宝だよ」

「イルハムに、30年後に、これ見せて、脅すの?」

「イルハムが、こんなので、ビビらないでしょ。むしろ近所の女性徒に人気が出たりとか。

髭蔵先生とかの過去が、こうだったら、ウケない?」

「別に、今はつまらない男なんだし、どうでもいいよ」

 

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