ちきうアネクドート

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マフマフ8

 

お前を、将軍のところへ連れていく。

カルシャは、勲章の男の体の前に手を回して、バイク後部に乗っていた。

カルシャは、村の人たち以外の相手と、バイクに乗ったことはない。

手を通して伝わる、勲章の男の筋肉質の体の感触が、カルシャの不安を煽った。

この男は明白な敵だ。パパを、ママを、村人たちを、無差別に殺した。否、自分で手を下しすらしなかった。村の子供たちにやらせた。想像を絶する鬼畜だ。

しかしこの状況では、どうにもできない。

カルシャがしがみついている勲章の男、彼こそが、彼女の運命の全てを左右した。

不安と憎悪の中の、一筋の光。

カルシャはベンジャニが心配だった。

あのとき、マキオにもらったスマホについて、この勲章の男に問い詰められているとき、兵士に殴られて連れていかれたのを見たのが最後だ。

あのスマホは、2人のものだった。

が、ベンジャニのことも一緒に連れて行って欲しいと言い出せる雰囲気ではなかった。

下手をするとベンジャニが殺される。非常時にイチャついてるとかいう理由で。

 

 

 

ベンジャニは殴られて痛む頭を抱えたまま、他の少年兵たちと整列させられていた。

「俺たちのレアメタル鉱山へ日本軍がくるそうだ。お前らには、そいつらを追い払ってもらう。何、難しい事じゃない。

ロケット・ランチャーが飛んでくるわけじゃないし、空爆を受けるわけじゃない。

さっきやったみたいに、目蔵滅法に打てば、奴らは倒れていくよ」

将軍から伝わった情報を、連絡兵は、元いた兵士と、少年兵たちへ伝えた。

フランスの外人部隊によれば、日本は国軍ではなく、警備員を派遣したとのこと。それなら、占領したときに倒した奴と同じだ。

大した装備は持っていまい。

兵士が訓示を垂れていると、辺りで銃声がして、歩哨が飛んできた。

その後ろから別の兵士たちが入ってきて、歩哨が何かを叫ぶ前に、銃を乱射した。

村を制圧していた統一反乱軍の兵士が何人かやられ、少年、少女たちは銃を持ったまま、一目散に逃げた。

侵入して来た兵士は外人じゃない。アフリカ人だ。政府軍の制服だった。

彼らは逃げる子供兵を撃たなかった。マフマフの政府軍は一応、世界に承認された真っ当な軍隊だった。

 

 

「日本人を解放したら、レアメタル鉱山の残金を払うだって?どこからそんなクソが出てくるよ」

「フランスは無駄な殺戮は好まない。それに政府軍残党は、意外に多い。気を付けろよ」

「日本人は解放しない。身代金交渉でふんだくる用だ」

「日本人は、一応、傭兵みたいのがアンゴラで待機してる。

日本は以前、アルジェリアのゲリラの人質事件で何人か亡くしているし、手をこまねいて見ているわけじゃない。

メンバーは恐らく各国軍を引退した人間とか、自衛隊経験者か何かだ。

俺たちほどの装備は持ってないが、あんたんところの素人兵士よりは使えるだろうよ。少年兵を使うのは止めた方が良い」

「残金は今すぐに払え」

「俺たちは、日本から救援要請が来たと、世界にアナウンスされてしまった。

あんたらみたいなタチの悪い統一反乱軍と組んでいたことを、バレるわけにはいかない」

「ふんなら、バラしゃあいい。人質を解放しろとか、残金を払わないとか、フランスがクソを並べるなら」

「その場合、密約を知ってる、お前を消すまでだ。

フランスはマフマフにビジネスで進出してるし、他に持ってる鉱山もある。だから、マフマフに外人部隊を駐屯させていること自体は可笑しくない。

お前らは少し、無駄な殺戮をやり過ぎた。

この間も、村人を皆殺しにして、子供をカッ攫ったそうじゃないか。内戦が終結すれば、難民たちの口からそういったことは伝わって、世界の知るところとなるだろう。

お前らの政府は世界に承認されない。どうせ俺たちの契約も無駄になる」

「ならどうして、初めから契約した」

「あの契約は、前の将軍と結んだものだ、前線で亡くなった。

彼は、そんなに頭の可笑しな人じゃなかった。マフマフ政府の腐敗がひどかったから、人民の支持もあった。

お前らが襲った村人の皆殺しを始めたのは、ここ1年くらいのことだろう。将軍が変わってからのことだよ。

お前らみたいな狂人集団が、強引にマフマフの大統領府を占拠しても、そのうち国連軍が来てお釈迦だよ。どうせ書類の1つも読めないんだろう」

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