ちきうアネクドート

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マフマフ12

 


襲撃は夜中だった。

カルシャが目を覚ますと同時に、隣の将軍の体中に穴が開いた。

カルシャは多くの返り血を浴びた。目の前に白人兵がいた。

「俺たちはキミを救いに来た、ベンジャニという少年の依頼で」

彼は胸元から、皺くちゃになった雑誌を見せた。「幼馴染の少年が、人質を救いたいと日本人に依頼」。懐かしいベンジャニの泣き顔。

記事は英語だが、タイトル部分だけは、どういうわけか現地語が併記されていた。

でもベンジャニは泣き顔なんか、ほとんど見せたことがない。

血まみれのカルシャはシーツにくるまり、白人兵に手を引かれて外に避難しながら、辺りを見渡した。

救出部隊は、統一反乱軍の兵士と銃撃戦をして、ほとんど射殺に成功していた。

白人の中に、アジア人が混じっている。マキオの姿は無い。当たり前だ。彼は兵士じゃない。

 

 


カルシャと再会したベンジャニは、彼女の血まみれの体を抱きしめた。

救いを求めて、しがみついたという感じだった。シーツにくるまれたカルシャの体は、硝煙と血の臭いしかしない。数か月間、ずっとこうだった。

マフマフの情勢は、すぐには立て直しが難しかった。

避難していたマキオたちは、アンゴラから現地へ戻り、国連軍などと共同で、やはり植林作業や現地の復興へ参加した。

旧政府サイドは久しく続いた汚職が今回の事態を招いたことをレクチャーされ、政治学などを学び直した。

何だかんだ言って、統治の為の、専門知識を持つマフマフ人は多くない。旧政府が腐敗していたからといって、即座に追放するわけにはいかない。

中には欧米帰りのエリート。良心があり、上が怖くて、したがっていただけの人も多い。

セキュリティ網を敷いたり、スマホの中継基地を設置したり、商魂たくましい人々が、世界から入ってきた。現地の人の雇用も増えた。

生き残った子供たちの一部は、語学学校へ移動した。子供たちの一部にとって、村へ戻って復興作業に従事するのは、あまりにトラウマが大きすぎた。

パパやママを、村人を、この手で殺した地。彼らの血がしみ込む呪われた土地。生涯、消えない犯罪行為の証。

レアメタル鉱山の人質を囲っていた統一反乱軍を、日本単独で落とせたかどうか、疑問だ。まず無理だった。大きな犠牲を払う覚悟なしには。

フランス外人部隊と、クリア・ウォーターの双方には、それでも、いくらか犠牲がでた。

この救出支援の借りで、レアメタル鉱山はフランスと日本の共同開発になった。

日本政府はフランスの取引手法に、逆立ちしても勝てる気がしなかったが、相手の示したのは、そんなにアコギな条件ではなかった。

ユカの語学学校で、カルシャは生まれたばかりの赤子を抱いていた。恐らく統一反乱軍の、死んだ将軍の子供だ。

ベンジャニは、何も言わなかった。黙ってカルシャに代わって、赤子をあやしたりした。

1年前、ここは地獄だった。何が起きても、誰を恨むことはできない。統一反乱軍の鬼畜は、死んだ。

子供たちは、どんな目にあったか、ほとんど語らない。未来のことを考えるしかない。

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