ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

俺のペニンシュラ1

 

その日は、配給の食事の量を巡って、小競り合いが起き、

最終的に、東北部出身者と、四川州出身者が、乱闘になった。

そんなに美味い飯じゃないのに、こんなもので諍いになるのは不思議だ。

殴られて吹っ飛んできた兵士のせいで、

ハマのテーブルは傾き、食器が飛び散り、ハマはその日の夕飯を食べそこなった。

上手い飯じゃないにしても、一食抜きは辛い。床から食っている奴もいたが、ハマはそこまで自分を落とせない。

乱闘した奴らは、懲罰倉行きになった。

中国人でなくてよかったと思うのは、こういうときだろうか。

しかし、中国人でなければ、お前は破壊工作員じゃないのか、っていう中国人たちの疑念にいつも答えなくてはいけない。

モンゴル人、ウイグル人チベット人、日本人。

 

「浜田大輔、こいつはシールズの出身だ。

日本人だからっていじめるなよ。通信傍受なんかをやってくれるし、

俺たちに必要な人材だし、代わりもあまりいない」とハマを部隊の前で紹介したパクは、優しいのか、意地が悪いのか、分からない。

キミは日本で体を張って平和活動をしていたんだってね、というのがスカウトの理由になるとは噴飯だった。

シールズ、もう誰も知らない名前だ。

 


「お前はこいつの紹介を聞いたか?ネイビー・シールズだろ、すげえな。そんな奴はなかなかいない」
ハマたちはポーカーをやっていた。

同じ隊のリトルが、新顔に講釈を垂れる。リトルは小柄だからリトル。誰かが負けると、そいつは悪態をついて小銭を置いて席を立ち、メンバーが変わって、知った顔が増えていく。

「オイオイ、待てよ。こいつがそんなタマにみえるか?」
「パクさんがそう紹介したんだから本当なんだろ、ハマ」

ハマは「どうかな」という顔をした。

「分からんよ。日本人っていうのは、腰が低いっていうからさ。
スミマセン、スミマセン、ドーモ、ドーモ、
だから油断がならないんだ。この「どうかな」っていう取り澄ました顔をみろよ」

イエスと答えると、ガタイの良い奴とすれ違うたびに、腕試しにケンカを挑まれるハメになるのか、

ノーと答えるとナメられてリンチなどに会いやすくなるのか、明白ではない。

ハマもどちらかというとガタイがよかったから、

アメリカの特殊部隊出身という噂が、全く嘘とは受け取られなかった。

ただ、気が弱いだけだった。

 

 

 


「おい、日本人、これ訳せ」

示してくる画面を黙って翻訳する。

ハマと、もう1人の通訳は、かなりのジイサンだ。もう80超えてるんじゃないのか。

彼の方がハマより中国語が上手い。ここで唯一の日本人、2人。

 

 

 

広告を非表示にする