ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

俺のペニンシュラ3


アメリカの警備会社エイジアン・セキュリティは、韓国に支部を展開し、

サムソンなどの大手企業から中小企業に至るまで、

それなりのペイを払うところなら、どこへでも、警備員を派遣していた。

各国軍の除隊者などを集めて、再研修をほどこし、精鋭部隊を自慢にした。

かつて朝鮮半島から撤退したアメリカが、なにがしかの影響力を残すために、ここに支部を残した。

 

 

 

「トダの子供の写真見せて」
「何で」
「どんだけブサイクか見てみたいから」
「2人とも、俺には似てないよ」
「それはお前の子供じゃないから」
「ハイハイ」

自衛隊出身の日本人のトダと、人民解放軍出身のルー、彼らは片言の英語でしゃべる。

エイジアン・セキュリティ社は、一応、英語と韓国語が公用語になっている。

トダが自衛隊にいたときは、

自分がこんなに早く除隊するとは思っていなかった。

自衛隊に限らず、だいたい軍のリクルーターは、使えなくなったら、すぐにチョンだ、なんて言わない。

キツイけど安定している、それが軍隊の、一般に流布しているイメージだ。

それで当時のトダは、安易に結婚してしまい、2人の子供がいて、

より給料の高い求人を見つけ、この地へ単身赴任していた。ルーにしても事情は同じだった。

自衛隊は、ロートルはあまり出世できない制度になっている。

窓際隊員なんていうのは、あまりいない。何しろ体力勝負だし、戦闘能力がなければ話にならない。

 

 

 

ソウル近郊に鎮座するその屋敷には、何らの活動をする要人が滞在していると言われていた。

そこにある中国の大人が長期滞在した。

彼らは出身地に従い、

ルーがその中国の要人の警護を請け負い、

トダは屋敷の主の日本人の身辺警護を請け負うことになった。

だからここの保安は、彼らを派遣した、アメリカの警備会社の、エイジアン・セキュリティ社が請け負っていることになる。

 

 

最近の変化。
変な中国人が来たこと。
新しい警備員が来たこと。

タローとシンゾーが偵察と称して屋敷内を徘徊していると、

中庭の噴水のところに腰かけている同い年くらいの少年を見つけた。

2人の心はときめいた。例の奴だ!変な中国人だ。

タローはシンゾーに良いところを見せようと思って、肘と顎でついて来いと合図した。

彼らより同い年か、少し年上か、少年は近づいてくる2人を目にすると、大人の来客がよくやるような一瞥を見せた。

中国人の少年には、心なしかタフな空気が漂っている気がするが、

タローは小柄でケンカが大して強くないにもかかわらず、あまり怖気づかない。

さっそく、得意の英語でメンチを切った。

「オッサン、お前、誰?ここを仕切ってる、俺たちへのあいさつ、済んだ?」

少年は中国拳法なのか何なのか、たおやかな女性のように首を傾けてから、ゆっくり立ち上がると、

タローを無視して、何故かシンゾーに蹴りを入れてきた。

油断していた2人には見切れない動きだった。

シンゾーは腹部に不意打ちを食らって咳込んだ。


「俺はシーチンピンっていうの。チンピン。
分かる?それにこの発音は、これからの世界の標準語だから。
日本人はシューキンペーとかいうなよ。ムカつくし」

「大丈夫か?こいつヤバイ奴か?じゃあ、逃げるか」

タローは変わり身の早い少年だった。

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