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ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

俺のペニンシュラ10

 

夜になり、退却は自主判断で、という連絡が来た。

トダらエイジアン・セキュリティ社の警備員たちは、集まって岸に告げることにした。

「ここに人民解放軍が来ます。逃げましょう」

彼らは、岸の正面に座って話をした。

応接間の長椅子、この椅子に座るのは初めてだった。椅子が足りなくて、立っている警備員もいた。

「それは確実なのか。ワシは、聞いてない。そういうことがあれば、ワシの耳に入るようになってるんだ。ワシは、そこまでヌケてない」

残っているのは警備員だけで、設備のメンテナンスをする、通信兵は、既にいなくなっていた。やはり不穏な気配がした。

 


「仮に誤報でも、逃げておいて、損はしません。避難訓練だと思えばいいです」

「ここでシーが平然と飯を食ってるが、あいつはどうするんだ?」

「大使は殺さないでしょう、

だから、この屋敷を一網打尽に、爆弾を落としたり、とかじゃないです。

地上から白兵を投入してきます、特殊部隊とか。日本人を殲滅して、彼らだけを救えるように」

岸はため息をついた。

「そうかね。そういうことなら、ワシは家人たちを起こしてくるよ。給仕たちにも言って回らなくてはいけない」

 

 

 


彼らは差し当たって、解放軍がおおっぴらに攻撃しにくい、人の多い中心街へ向かうことにした。

ヘリや戦車が、近づいて来る気配はない。

だからタローは、ライフルの置いてある屋敷の倉庫に寄る余裕があった。

彼は浮足立っていた。あのライフルを使うチャンスがやってきた。

タローは倉庫へ忍び込み、走って行き、背伸びして、壁に下がっているライフルの一本へ手を伸ばす。

動物的なカンが危険を告げる。

振り向くと敵に出口をふさがれていた。小柄な兵士、1人だ。

「待ちなさい。あんたを逃がしてあげるから」

老人だが綺麗なフォームで銃を構えていた。よどみない日本語を話す、人民解放軍の制服を着た老兵士。

タローには、相手の方が狙いが正確だと思えた。

彼は本物のライフルを持ったのは初めてだし、下手に反撃すると、先に撃たれそうな気がした。

「ワシらはこの館を制圧すればいいんです。全員殺せとは言われてない。

あんたはまだ小さい、逃げなさい」

「俺は戦える。銃の腕だって悪くないよ」
「無理だよ。あんたの3倍は背丈があるような奴ばかりだ。それにあんたらは、圧倒的に不利だ」

「ここを見張ってる傭兵会社が、兵力を追加でよこしてくれるはずだよ」

「その間に死んでしまうかもしれないな」

「逃げるって、でも、どこへ」

「そうだな、ワシについてくればいい」

タローは老兵士を胡散臭い目で見た。腕が確かな奴が、ロクデナシのことは良くある。

「そんなの、罠じゃないのか」

「ついてこなくてもいい。しかし、中国の軍人は野蛮だ。日本人を見たら殺す」

野蛮な中国人なんて大したことない。

「だったら、屋根の上に連れてってくれよ。俺は遠くから獲物を狙うのが得意なんだ」

「ここは中国のヘリや空軍が囲んでる。屋根の上に上るなんて、自殺行為だよ」

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