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ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

俺のペニンシュラ11


トダたちが、屋敷の要人たちと逃げる途中、

背の小さなシンゾーが、屋敷の壁の側でしゃがみこんで何かをやっている通信兵を見つけた。

暗闇でも少し目立つ金髪の女性兵士。シンゾーは、彼女の制服の、裾を引っ張った。

人民解放軍が来るんだよ。逃げないといけないよ」

「ありがとう。でも、私がここにいたことは、誰にも言わないでほしいの」

「言わないよ。でも危ないよ。逃げないと」

彼女は急に空へ浮かび上がった。ワイヤで上から吊り上げられていたのだ。

辺りは騒がしくなっていて、彼女の上にはヘリが浮かんでいた。ヘリは、遠くの空に、それ以外にも、もあった。

彼女がいたところに、黒いメモリチップを見つけて、シンゾーはそれを拾ってポケットへ入れた。


警備員たちは、敵襲に備える為に、散開した。トダがシンゾーの側に付き従った。中心街に、早く辿り着かなければ。

走っているうちに、会社からの援軍がついたのか、傭兵の数は増えていた。彼らの任務は、この屋敷の滞在者を、無事に警護することだ。それが契約だ。

銃声がして、前方の兵士が1人倒れた。ついに、人民解放軍が到着したのだ。

まだ人気のない道路だった。周辺住人は既に警告を受けて避難している。

中心街まではまだしばらくある。

打たれた兵士が立ち上がろうとすると、今度は隣の兵士が撃たれた。

シンゾーの顔に血しぶきが掛った。側にいた兵士が腰のあたりを撃たれたからだ。

トダがシンゾーの手を引いていた。彼らを死なせてしまったら、トダや他の傭兵たちは、重大な任務違反だ。

もしかしたらおぶって走った方が早いかもしれないが、彼は自分で走れるというだろう。

血が目に入りそうになり、シンゾーは顔を手で拭った。血はヌルヌルしていて怖かった。

また、3人ほど倒れた。もちろん、エイジアン・セキュリティ社側の兵士も、応戦して、向こうも何人か倒れた気配がした。

方々でうめき声がするが、銃声にかき消されてよく聞こえない。今走れる者は、走るしかない。

彼らは依頼主を守る以外の指示はなされていない。

そういう訓練を、かつて在籍していた軍では行ったかもしれないが、エイジアン・セキュリティ社独自の特殊な訓練は行っていなかった。

彼らの任務は、依頼主の命を狙う、スナイパーを排除したり、暴漢を追い払ったりするのが主で、大量の軍隊との交戦までは想定していなかった。

 

 

 

 

解放軍兵士は、トラックを降りて、指定されている屋敷へと向かった。

途中で屋敷の人間らしきものを見つけると、撃った。

ハマはほとんど発砲していなかった。

応戦しているフリをしながら、銃を構えて走っていた。

解放軍の兵士の1人がハマのサボタージュに気が付いた。

ハマはライフルの先で頭を殴られ、衝撃で倒れそうになった。

「このクソジャップ、あそこにいるジャップを撃って、確実に当てるんだ」

それは絶対、確実な目標じゃなかった。逃げているし、距離も遠い。

ヤケクソで撃ったハマの弾は、逃げている給仕らしき人間の足に当たり、彼は地面に転げた。

「そうだ、その調子だ」

もう兵士はハマを見ていなかった。自分の弾を撃つことに専心し始めた。

ハマはその兵士の心臓部を、背後から至近距離で撃った。

もう終わりだ。もう終わりだ。兵士のカーキ色の制服が、赤黒く染まり、音もなく、彼は崩れ落ちた。

俺はもう、ここで終わりだ。

だが、誰も見ていなかった。

周囲の兵士は、自分の標的を追うことに集中していた。

 

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