ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

亡命イラク人4

 

遺伝子工学が出現し、クリスチャン・カルトが猛烈に抗議し始めた

遺伝子で多くの資質が決まる。

それは運命と言っても別にかまわない。

が、運命とはそういうものではない。神が決めたものだ。

遺伝子の設計図だって、神が作った。それは神のものだ。

これ以上神の財産を奪ってはいけない。

DNAだろうと、人体だろうと、動植物であろうと、その著作権は、いつだって神にあった。

それを盗む奴は犯罪者だ。

コイツはクリスチャン・カルトの残党だ。だが、どうでもいい。

ミラクルはこういう変な学校に入れられていたが、豹柄のテレビの方が面白い。

豹柄の支持者が、どこにいるかって、俺らみたいな奴らだ。

イモでゲスで、教会の牧師なんか面の皮の厚い詐欺師だと思っている、不信心者だ。

 

 


豹柄が聖書に手を置くと、ギャグになってしまう。

メメリカを1つにまとめると、人口の半分くらいの人が思っていた、埃を被ったイワシの頭が。

旧約だか新約だか、何だかわからないけど、大統領はいつも、それに手を置いて宣誓していたから。

そのイワシの頭にはご利益が無いってのが、豹柄人気なんだろうか。

クリスチャンがゴットと呼び、ムスリムがアラーと呼ぶ。同じ神を戴く者同士がゲバっていた。もう終わりだ。そうか?そんなの昔からじゃん。

そんなややこしいことを知っている人は、ミラクルの周りにはいないし、ローマ法王ですら知っているかどうか。

俺の神って何。

どのみち、神が死んだ世界に生きるミラクルにとって、人種差別はスタンダードだ。

どの仕事がいいとか、どんな夢があるかなんて、オプションだった。

この街だって大分荒廃していた。復興中のイラクの方が職があるんじゃないのか、下手すると。

「お前らこの現実見ろよ。アメリカのパスポートなんか、別に大したことないぜ、って言いに行ったらどうだよ」

神が生きていた頃だって、差別はあった。昔の方がひどい。黒人に人権は無かった。

イラクに行ってか?お前はイラク原人と対決するタマかよ。どうせ俺たちに空爆されてイラ立ってる、イラク原人に撃たれて終了だな。

お前に軍隊に入る根性がありそうには、見えない。最初のテストで失格だ。そうしたら、装備をどこで調達すんだよ。Kマートで防弾チョッキでも買ってくるかよ。

ソイツをユーチューブで中継したら壮大な葬式になるよ。映像が唐突に乱れたりとか、リアルだよ。俺たちクソな量産型白人には、そんな花火の上げ方もあるってことだ」

「アメリカのパスポートが大したことないってのは誤解だよ。それは低能にとっては意味がないってことだ。

奴隷主に、絞られても屁でもない奴には、大したことがあるんだよ。

アメリカに、フカフカの椅子は余ってるんだよ。相対的にはな。

ただそこに座れるだけの、根性の入った白いケツが少ないってことだ。

棘だらけの椅子に座ってた奴にとっては、ガタついたパイプ椅子だって貴族の椅子だ。

馬馬車みたいに働く移民にとっては、昔より格段に良い暮らしはあるし、金は儲かるし、良いことだらけだ」

「だったら、奴隷主に絞られても屁でもない奴だけを合衆国民とする、って憲法に書いたらどうだ」

「お前、なんか変だよ。そうすると大分、左掛かってくるんじゃないのか。俺たちはニガー死ねとか言ってる方がお似合いだよ」

 

 

「あんたは何が言いたいのかわからない。目の前に釈迦の垂らした蜘蛛の糸がある。お前はそれを切るカンダタか。

あんだって元々は、移民だろう。お前の前で、釈迦の糸が切れる、そういうのって、どう思うよ」

イラク人は肩を竦めた。相手のジェスチャーは、真似してみるに限った。それだけでアメリカへの恭順の意になった。

俺たちは客だ。肩くらい竦めたって、ムスリムの教えには反しない。

で、コイツは何だ。左翼だとは言った。正直者なんだろう。コレで何人目か。

左翼は、難しい。変種が多かった。ムスリムを敵視してくる右翼より分かりにくい。目の前のスカした黒人は平然としていた。

「だけど故郷を野焼きにした宿敵の軍隊に入るってのは、さすがに奴隷根性が過ぎるんじゃないのか。

俺たちは、そういう奴を死ぬほど見てきた。黒人は奴隷扱いされて、ロクな賠償を受けてないし、挙句に差別されて貧困に喘いでいるのが現状だよ。

逆じゃないか。損害を加えた奴が差別されるはずだ、普通だったら。

加害者の白人が、被害者の黒人を差別するのは不可解だ。だって、アフリカから黒人を連れてきたのは、白人だよ。それを誰も指摘しない。ここは、そういう奴隷根性の染みついた奴が多い」

「ソイツは分かってるんだよ。俺たちの故郷は完膚なきまでに野焼きにされた。奴らにそんな慈悲心が無いのは猿でも分かる」

スカした黒人は少し考えた。

故郷が無いってのは、良いのか、悪いのか。下手に故郷なんかあるから、焼き払われたときに、人々は慟哭する。

そもそも地元の黒人から奴隷として売られた俺たちには、故郷もクソも無い。だから?

俺は、そこから何かを作り出せるだけのタマか。

爆弾が落ちても、雷が落ちても、故郷なんて無くなるときは無くなる。いちいち他人を憎んでいたら、時間の無駄じゃないか。

だが、とにかく何かを作り出さなければいけない。ウダウダしていたら、生きて行けない。スカした黒人は頭を切り替えて、口調を改めた。

「慈悲心は必要だと思います。そのくらいのことを、私たちはイラクの人たちへ、した」

「アメリカってやつは、空爆する奴と、謝る奴が役割分担してるのかよ。俺にはここの政治の仕組みが分からない」

「そう考えてもらっても構いません」

スカした黒人は、あくまでスカしていた。彼は俺よりは文明人ってやつなんだろう、とカリームは呆れた。

綺麗な英語だ。映画なんかに出てくる、ニガーって感じじゃない。

だいたい、亡命イラク人に寄ってくるのは、面倒臭い奴が多かった。黙って親身になってくれる人もいたが、それだけでは済まない場合も多かった。

右方面からも、左方面からも寄ってきた。

政治屋連中への対応は難しい。ただでさえ英語が分からないし、彼らには元々、コーランの知識しかない。

「誰でも好きに住んでくださいってか。奴らにだって縄張りはあるよ。俺たちアラブ人は故郷で殺しあっていたから、そのくらいは分かるよ。

イラクの米軍に白人兵は大勢いたよ。やったことは、奴らも俺らも同じだった。

同じくらいキツイ訓練をやって、同じだけの命の危険に晒されていた。良い土地に住むのに、何かの代償が必要なのは分かるよ。

生れた時から、赤い絨毯の上を歩いている奴も、もちろんいるんだろうよ。そんなのはアラブにもいる」

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