ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

華人警官7

 

「アンタ、アメリカ人とつきあってるらしいじゃないか」

アメリカ人という名称は、外人でなければ、不法移民特有だ。

ソーシャル・セキュリティ・ナンバーを持つ市民にとって、周囲の人は全員、アメリカ人だ。

「お金は言われた通りの額を、返しています」

どこのマフィアも、言うことは同じだ。

お前は俺に恩がある、まだ渡航費を返しきってない。

死にたくなければ、手駒として動け。お前は、不法移民だ。俺以外の、誰もお前を守らない。

現状のメイは、ただのレストランのウェイターで、

目の前のマフィアは、一刻も早く手を切りたい対象だ。

貧民にとって、渡航費は目が出るほど高い。もっと金さえあれば、金さえ返せれば。

「お前にとっても、アメリカ人は金蔓だ。そうだろう」

アメリカ人の彼は純粋に惹かれた相手だ。金目的で付き合ったというわけではない。

というか、出稼ぎの不法移民に行きつくような下っ端に、そこまでの手管はない。

打算が無いとは言えない。

現地に溶け込みやすい、英語が覚えやすい、マシな仕事を紹介してくれるかもしれない。

いつ振られるか分からないし、全幅の信頼を置いてるのではないが、

いくらなんでも金を引っ張る為に、好きになった人と付き合うような人間になりたくない。

ソーシャル・セキュリティ・ナンバーを持たない不法移民にとってのセキュリティは、自分の振る舞いと心持にしかない。

「仮に私の金蔓だとしても、アナタの金蔓じゃありません。

悔しかったら、アナタも自分でアメリカ人女性のパートナーを見つけて下さい」

メイは引っ叩かれて、壁際まで吹っ飛んだ。

こんなことで傷は作りたくない。

レストランの客にも、せっかくでき始めた、現地の友達にも、キナ臭い事に巻き込まれている女として敬遠されてしまう。

 

 


オイオイって感じだった。ココは親族に共産党員がいると入れない組織なんだよ。

坂下は上から、定期的に思想チェックをしろと言われていた。

腹を探るには、まず釣り餌を垂らさないといけない。自分の手の内もある程度見せて、少しづつ互いに手持ちのカードを交換していかないといけない。

中国人パブで使う手法と同じだ。坂下が、何で中国人担当になったかは、不明だ。出世コースから、大分外れていた。

「例えば華僑の方にとって、中国籍を捨てて、日本国籍を取るのはリスキーです。日本人は排外主義だし、安心して住める場所ではない。

中国はもう、昔の華僑の人が、清朝末期や戦中、文革の混乱で命からがら逃げてきた、あのどうしようもない帰るところがないような、荒れ果てた大陸ではないです。

ただ、ビジネスで来ているだけです」

一之瀬は、この手の呼び出しを食らうたびに、困惑した顔をしていた。

それを見た坂下は、自分も困っていることを、白状した。

「レンフォー叩きをしている人たちは、二重国籍者の存在が、日本にとって、具体的にどういうデメリットがあるのか、全く指摘していない。

かえって、自分の恥を晒している。

そこを指摘すれば、日本社会のルールが透明性を増し、海外客にもPRし、小銭が落ちて税収が増し、大きな進展になるかもしれない。

日本にとって、二重国籍とは何なのか。ドイツのドルコ移民は、全員、二重国籍でトルコでも投票している。そこに、どういう背景と理由があったのか」

一之瀬は政治なんか知らないし、知っていたとして、知らないって顔をするのが華僑の流儀だった。中国流の処世術だ。

ここは純朴のフリで、夫婦仲の良さをアピるしかない。

「僕は尻に敷かれてますから。直接、聞きますか」

 

 

 

会って見ますか、って逆にビビル。

何だよ、中国人パブで慣れてるだろ。

ただ中国人パブの一段格下の存在だ。少なくとも身分としてみれば、能力的にどうかは知らない。爪を隠す状態かもしれない。

そうであったとしても、大丈夫な関係を築いてきたつもりだ。

身分を明かさないとか。

大丈夫もクソもなかった。

坂下は下っ端で、公安ではない。

人が余ったからやっておいてくれない、くらいの

組織として真面目にやってるとかではなく、適当だった。

商社にせよ、何にせよ、全方位外交をするには、つねに人材は足りな過ぎた。


「一之瀬さんは、普通にイケメンですから、完全な金蔓ってことはないでしょう」

坂下は、とりあえず会って見ますかフラグを回避した。

完全な金蔓。一之瀬がマジビビリしたので、坂下はチッと思った。

それにしたって、イケメンって警察学校には微妙な響きだ。坂下はイモ顔だった。

もちろん、そんなことは警察学校で1ミリの評価基準にも関連しない。

顔は怖い方が有利だ。

あんまりイケメンだったら、対象との接触に有利だから、公安辺りに引っ張られる。

だが、一之瀬が学生時代の、ナンパ仲間なら言うだろう、彼は一番の稼ぎ頭って感じの有望株だ。お前イケメンだからヨロピクって。

俺は、そういうときに後ろに隠れて、イケメンが魚を釣ってきてくれるのを待っている、イモだった。

それで、連れて来た姉さん連中に、何だ、残りはイモかよ、みたいな顔をされるに決まってるんだけど。

一端、警察の人間になれば、その手の気後れは一切なくなった。警察学校の厳しい訓練に耐えられる能力を持つ人は少ない。希少人材だし、女も寄ってきた。

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