ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

華人警官10


一之瀬が喫茶店に連れてきた奥さんは、いかにも頭が切れそうだった。

が尻に敷かれてるのは仕方がない。彼女はユエと名乗った。

「中国のパブの女の子に、あなたが好きか嫌いか聞くの。ストレートに聞いてあげようか」

坂下はビビった。

だが、自分がゴチャゴチャやってるよりマシな気もしてきた。

坂下は警察のスパイで、レイはマフィアのスパイかもしれない。レイは坂下をスパイだと思っている。

結局スパイとスパイだ。どれだけ逢瀬を重ねても、どこにも行かないだろう。

相互不信と、騙し合いにしか発展しない。

 

 


「日本のアメリカと同じセキュリティを敷く、ですか。日本は前からそうでしょう」

「そうだよ。日本は、チャイニーズ・マフィアが手に負えないと言ってきた。

俺のところがメキシコの不法移民と麻薬なら、向うは北朝鮮覚せい剤や、中国の不法移民ってことだよ」

北朝鮮とか、アメリカ人のイクセルには、あんまりピンとこないが、メイの故郷の中国の隣の国だ。小さいが、核を持っているらしい。

イクセルは、メイという中国人女性と結婚する予定だった。転勤があるなら、彼女を日本に連れていくのだろうか。

メイは飲食店のウェイトレスをやっていて、不法移民で搾取されているから、給料はスズメの涙だ。

イクセルの給料だって大したことが無いが、日本にったら俺たちの暮らしはどうなるんだろうか。

アメリカに従業員の、家族をまとめて面倒を見る企業習慣はなかった。

だが結婚すれば、メイは少なくともアメリカ国籍になり、不法ではない。

働く能力さえあれば、働けるし、メイはしっかりした人だ。

 

 

黄昏警官はまた警察学校に来ていた。

その日は黄昏ていなかった。前より顔色がいい。彼はリュウを呼びだした。

「俺は首の皮がつながった。何と、まだ現役警官なんだよ。お前はあの件を、上層部にチクってくれたんだろう」

「いや、チクってないですよ」

リュウは元黄昏警官に、こっちにまで中華街で拳銃を集める話を持ちかけられたことを話した。

「ソレって先輩のせいじゃないですか」

「俺だってリュウさんのことは誰にも言ってないよ。リュウさんがしゃべった同僚の噂が、上に行ったんじゃないのか」

どうして拳銃の押収ノルマの捏造が発覚したのか、2人は不明だった。雲の上で何かが起こった、それだけ。

 

 

坂下はレイを警察に「しょっぴいていった」

そういう体裁にしたほうが安全だった。職権乱用だ。

いつもみたいに、店に行ったら、どこで聞かれてるか分からないから、よけいな話はしたくないとレイが言った。

かといって、一之瀬の家に連れて行って追跡され、彼らが、チャイニーズ・マフィアに狙われるわけにもいかない。

たかがパブの姉さんに、マフィアはそこまで執拗ではないと思うが、一応警察へ連れて行った。

「私はマフィアを抜けたいです。どうやって抜けていいか分かりません」

「坂下さんは、レイさんが気に入ってる。レイさんは、坂下さんに、少しは気があるの。全然無いの。

彼にとっては、どっちだって同じなんだけど」

一之瀬の妻、ユエが言った。坂下は肝を冷やした。そんな本音はバラして欲しくない。

俺は女の表面的な態度と、ツラの皮しか分からないような鈍感男だ。内心で何を考えてるか分からないし、あまり知りたくなかった。

が、一之瀬もやっぱり違う方向に鈍いので、何も気が付いていなかった。イケメンという生物は、何も考えて生きて行けるのだろうか。

レイは坂下が気に入っていると、店では言った。

だが、それ自体がマフィアの垂らした釣糸かもしれないし、全く信頼できない。

マフィアを抜けたレイなら本音をしゃべってくれる。

だが、抜けるには坂下が手を貸すしかない。レイにとっての俺は、ただのマフィアから抜ける為の道具なのかもしれない。

そのあとレイは、坂下から逃げるかもしれない。だが、坂下から逃げたレイに、行くところは無い。そういうのって、幸せなの。

何で?俺が幸せにすればよくない?そんなことが可能か。

坂下は仕事が忙しいので、女に疎い。

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