ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

インダストリアル・ドリーム6


マオはとくに勇気のある男ってわけでもなかった。見ず知らずの気になる女の子に声をかけるとか、まずやらない。

ただ工場生活はあまりに退屈で、突発的に何かがしたくなる、正体不明の何かを期待して。

「私はもうこの工場にはいないの。もっと稼げるところへ行く」

マオに話しかけられた彼女は、製品に毛が落ちない為にかけていた頭巾を取った。

頭巾というか、シャワーキャップみたいなもので、全ての従業員はそれをつけていた。

悲報だ、最後に声を掛けてよかったのか。

「もっと稼げるところかよ、俺にも教えてよ」

「無理だよ、女子しか取ってないから」

「そんなところ行くなよ。俺の給料、少し分けてやるから」

彼女は笑った。見ず知らずの人間に、俺の給料を分けてやるもクソもない。

「そんなところって、別に変なお店じゃないし。普通の喫茶店のウェイターだよ」

「中国の普通の喫茶店はヤバイんだよ」

どうヤバイのかマオは知らない。

経営者の倫理観が無いとか、客がウェイトレスをお持ち帰りするとか。

マオはまとまった休みがないから都会にまで遠征しに行かないし、噂でしか聞いたことが無い。

 

 

 

 

「トンラプ・ゲーム自体が、アメ車乗ってるの?」

「大統領になってからは、乗ってるんでないの。少なくとも、公用車はそうだろ」

「ふんなら、イタリアの公用車はフェラーリなのかよ」

車なんて、もう手が届かなくなった草食動物が、念仏を唱えていた。

俺たちは、あんまり動かないし、せいぜい新興国で売ればいい。

あの辺はまだ、近所に車が1台あるだけで、急患が助かるような世界だ。

日本は狭い、元々車がそんなに無限に売れる地区ではないし、手元に金がないとなれば尚更だ。

「アラブかどこかのパトカーで、フェラーリはあったよ。どういう経緯で導入したのか知らないけど」

「王族の気まぐれだろ」

「だったら、イヴァンカみたいなギャルを屋根一杯乗せて走ればいいよ。六本木辺りが、アメ車で埋まるから」

イヴァンカ、トランプ大統領の3人目の妻。

プレイボーイにビキニで出しても、チアガールのリーダーにしても、オートクチュールのモデルにしても、絵になりそうな女だ。

日本で走ってる車は、新車が多過ぎるだろ。

GDP1位のアメリカですら、街中を走る車は、もっとボロボロだ。

「人を大量に屋根に載せるのはイナバの物置だろ。100人乗っても崩れない」

「イナバの物置のCMに、ギャルは載ってないから。アメ車は頑丈に見えるけど、ああ見えて壊れやすいのか」

「乗ったことないから、知らないよ。戦場ジャーナリストが写したアフガンとかで、日本車にゲリラが100人くらいのってるだろ。ゲリラが軒並みトヨタ使ってるところを見ると、日本車の方が頑丈なんじゃない。

ホンダのカブとか、東南アジアで20人くらい乗せて走ってるだろ」

「20人も乗って貰ったら困るじゃん。ソニータイマーと同じで、6人以上乗ったら、壊れるように作らないと、売れないだろ。1台で20人に載られたら、売り上げが落ちるよ」

「そんなことないよ、頑丈な方が、事故時の生存確率上がるから」

 


マオは都心へ行く女の子が、連絡をくれるというので、スマッホなるものを買った。

コレ、俺たちが作ってるやつじゃん。

かといって、社割とかは、無かった。

社割が無いのは、中国ではケチには当たらない、普通だよ。


「バーカ、連絡なんか永久に来ないんだよ。

中国の喫茶店なんかで働いていたら、誰かに買われて終了だ」

「闇に流れて人売にあうより、いいだろ」

チェンたちは、都心の喫茶店のウェイトレスについて、何も知らないで話していた。

「闇に流れるって何だよ、パチモンのことか」

「ココは元請けが世界ブランドだから、まだ安全なんだよ。

世の中は、僻地の共産党幹部が、レンガ詰みに誘拐した児童を使っていたとかいうんだよ」

「レンガ詰んで何するの」

「さあ、自分の家の柵でも作ってたんじゃないの」

「だったら、自動レンガ詰み機械とか作って売りに行けば」

「誰が?」

「さあ、資本と技術を持ってる連中だよ」

「お前じゃないだろ」

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