ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

indian anonymous3

 

アノニマスの義賊気取りは、当然ヨゴレ政治家連中には面白くない。

「クソが。せっかくの談合が水泡に帰す。逮捕できんのか」

「私たちは散々ウマイ汁を吸ってきた。民衆の怒りはたまっている。仕方がないよ」

「だが、不法アクセスには違いないよ」

「ですが政府は腐敗してるだけあって、ローテクです。だいたい、またCIA辺りが絡んでるんじゃないですか」

インド2の財政は、要人のプライベートの警備を完璧にするには手薄だった。

彼らも、あまり公式な場所では腹を割れないから、密談には隠れ家へ行く。

そういうところを管轄しているマフィア連中も完全に政府の犬ってわけではなく、たびたび派閥争いを起こしていた。

だからハッカーたちが、インド2の警備システムのスキをつくのは難しくなかった。

昔の人が、警察無線を傍受するくらい簡単だった。

「インド2政府はエンジニア育成に血心を注いできた。飼い犬に手を噛まれるとはこのことだよ。どこかへ追い払えないか」

「アメリカはトランプが人の流れ止めてるから、難しいですよ。中国辺りにでも頼みますか」

「CIAの飼い犬なんて、どこも引き取らんよ」

「飼い犬と決まったわけじゃありません。まさか殺すんですか」

「ですが、一旦作ったインド2のコンピューター・システムはエンジアなしには回らない。また最貧国へ転落ですか」

ヨゴレ2人は肩をすくめた。権力者の執着心は並外れているが、インド人が白旗を上げるのは早い。

 

政府の公募に応じるエンジニアは志が低いのか、あまり実力がなかった。

それで、誰がやっているのか突き止められないし、エンジニアを全員追い出したら、インフラはヤバいしいろいろヤバイ。

優秀なエンジニアたちは、暇に飽かせて、インドの汚職を一層しようと考え始めたってこと。全く面白くない事態だった。

ただ、アノニマスつまり匿名のハッカー連中は、大した正義感は持っていない。以前なら、汚職や嫌ならアメリカへ行けば事が済んだ。汚いインド2はサッサと後にして新天地へ。

だが天国の扉が閉まり、実家のボロ屋を修理しないといけないことになってきた。よって、向うだって本気だ。

 

 

 

「君はこんなところで、何をしているの。良かったら話を聞かせてくれない」

小学生でもわかる地方の言語が、空腹で路地に座り込んでいるシーハの上から降ってきた。

それはただの、ネタを探していたジャーナリストの好奇心だった。ただ、それが白人ではなく、インド人なのが、今風だ。

ジャーナリストの彼にとって、シーハはネタになりやすい少女だった。

貧しい親に売られたこと、奴隷制度の体験、幼なさの残る少女の写真、分かり易いインド2の貧困をアピールするには十分だった。

カメラマンがジャーナリストに「綺麗な女の子だね」と言った。

シーハは少し恐怖を感じた。コイツもあの地主のドラ息子と同じじゃない。ただ、ジーパンを穿いて、カメラとか文明機器を持ってるだけ。

が、彼らは、スラム住人を人身売買のマフィアから救う、マリアの涙というNPOがあって、シーハをそこへ紹介するといった。

シーハは、自分の取材記事が誰の手に渡るか知らないし、その世界のこともサッパリ知らない。そんな雑誌は、地元の農村にもなければ、このスラムにも無い。

彼女が紹介される、NPOとは、ノン・ポリティカル・オーガニゼーション、つまり政府資本じゃないってこと、という説明を受けた。

だけど、インド2の政府なんて、何もしないし、他の奴だって、何もしない。そうじゃない?

悪そうな臭いはしなかった。物心がついてから、ずっと思っていた。この苦界から抜け出したい。でもどうやって?

「あなたたちは私を救ってくれるの?お父さんのことも連れて行って。コレは私のお父さんなの」

シーハの隣にいたオッサンはギョっとしてシーハを見た。

俺がここから抜けられる?それも子供のお情けで?

このスラムに住んでいて、そういう幸運は、まず降ってこない。それがインド2だったはずだ。

 


「仕事を斡旋するだって?あんた、俺に金貸す気あるのか」

ボームは、ジャララバードで永久に土地ころがしをしても仕方が無いと思った。

ボームは文盲じゃない。頭と体が、底辺カーストの唯一の武器だ。土地で増えた小銭で、土地の次は、人材といこう。

「あんたの経歴じゃ大して稼げないね。軍隊とか、マグロ船でも行く気があれば別だけど」
「軍隊は学歴がいるだろう」

ボームは肩をすくめた。こんなところでスカウトやってどうするの。

だが、スラムに金が転がってることは、あった。

万人に奨学金が普及し、底辺が本当に救いようのない底辺しかいない先進国と違う。

ただ、スラムの人材の識別法が分からなかった。

どういうのが使える人材なのか。哲学的な顔をして座り込んでいる奴か。

酒飲んで寝ている奴じゃない。いや、酒飲みは、脳があるから、この現実に耐えられないんじゃないのか。

「アンタ、工事夫でも探してるのか」
「違うよ、デキる奴を探してるんだよ」
「何がデキる奴なんだよ」
「後から考えるよ。どこかの職場に、いい奴を連れて行って、ドヤ顔するんだよ。いい人材が安く雇えます。派遣会社ってやつだ」

ボームは言ってることが適当になってきた。

スラム住人に金を貸すのは悪手か、というテーマは貧乏人が借金を踏み倒したサブプライムローン・スキャンダルの後に、何度も論議された。

彼に、一生職があれば、返済は不可能ではない。が、一山いくらの労働者は、不景気でクビが飛ぶこともあるし、相手が勤労意欲の薄いスラム住人だったらお終いだ。

貸した金は蒸発して、返ってこない。無駄撃ちだ。

インド2、バングラディシュ。ノーベル賞を取ったグラミン銀行が出てきたのもこの辺りだった。

例えば、勤労意欲のありそうな女性を選び、5人セットで資金を貸して、励まし合って金を返す。

井戸を掘って荒地を耕作地に替えるなど、海外のNPOなんかの力を借りることも多い。

グラミン銀行は、この辺の汚い金貸しみたいに暴利を貪らないから、地味に広がり、実績が評価されたらしい。

経済を、長い目で見るということ。

バカは今日の金と酒にしか目がない。そういうバカの連鎖はそろそろ止めるべきだ、と誰かが言ったに違いない。

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