ちきうアネクドート

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indian anonymous6


伝統的な邸宅に、政治家が3人くらい来て、政府の開発計画をバラアノニマスのCMを見せて、大げさに肩を竦めた。そういう仕草が大衆に受けるのか、とレイモンドは訝った。

マナーに現れる、氏素状は隠しにくい。没落貴族のレイモンドとヨゴレ政治家、どうみても出身カーストが違うのは明白だ。

ただ双方は違うやり方で、他人をエジキにして生きていた。それと自覚せずに、というか、他人にそう悟られずに。

政治家の1人が、アノニマスをくさした。

「こういのは悪しき流行だと思わんか。高カーストと警察と政府。俺たちは、長くインド2で、鉄のトライアングルを築いてきた」

「しかし俺たちは、欧米で反乱を起こしている白人の中産階級じゃないんだ。インドでは圧倒的に、少数派だよ。こうなったら分は悪い」

三角形のピラミットの頂点は、いつも底辺より少数だ。だから知恵を絞らないと、すぐに頂点の首は飛ぶ。

「だけど、コレで喜んでいるのは、土地を買うくらいの蓄えがある中流階級ですから。スラム住人だったら、逆に煽ればこっちの味方かもしれないですよ」

レイモンドは、本当はこの手の成りあがり政治屋が嫌いだった。インド2の政治家は、4割が前科者という噂があった。

レイモンドは相手が前科者かどうかなんて、いちいち聞かない。どんな政治屋だって、前科者と対して変わらないくらい汚い。

犯罪がバレたかバレないかの差くらいしかない。

こと高カースト既得権益層に、ご機嫌伺いに来るような抜け目のない奴は、大抵そうだ。

どうせ卑しい生まれの成金だ。本質的に好きになれない。

成り上がり者の汚れた手と、上流階級のなまっちろい綺麗な手。

双方、握手したあとは手を洗いたくなる。

だが、レイモンドだって、永久に家柄に縋って霞を食って、高級煙草を吹かしているわけにはいかない。

汚い手と握手するのも、生きて行く為には仕方がなかった。

「ITは国策は国策だ。インドを大分、大躍進させた。だが、何事もいい面ばかりじゃない。裏目に出ることもあるもんだよ」

ITの根幹をなすプログラミングの技術を極めたアノニマス、世界のプログラマたちのカリスマか。

レイモンドはそれを、何匹か飼っていた。もちろん他人には公言しない。政治家とアノニマスは、いつ兵糧が尽きるか分からない没落貴族のレイモンドの隠れ備蓄だ。

インド2の、パワーバランスの行方が不明だ。

俺は生きるのが下手だが、このまま野たれ死ぬわけにはいかない。

そう思えば、目の前の政治家への嫌悪感も薄れようというものだ。

レイモンドは政治家連中を玄関先まで送った。

 

 

最低カーストから、このNPOまで辿りつく人は、特殊なセンサーを備えている。

自分の将来を思い描く能力があり、迫りくる身の危険を察知し、足一本で田舎から都心の事務所へ、辿りつくだけの体力を備えていた。

シーハの周りでは、他の少年少女がパソコンをいじったり、本を読んだりしていた。

「CMの子だね」

マリアの涙に最近常駐しているインド人スタッフが近寄ってきた。

「100階建ての衛生住宅なんて、デカく出たよ。誰が考えたんだ」

「不動産について、詳しいことは知りません。スタッフの方が持ってきた話です」

シーハは焦っていた。知らないといけないことはたくさんあった。

このNOPの全てが正義とは限らない。

柄の悪そうな政治家の姿を良く見るし、目つきのよくない白人がいることもあった。

インドで聞いていけないことは多い。奴隷として生まれた彼女は、慎重でいるのが習い性だ。

「アンタはいつも、飢えた目をしてる。ここのメシは美味いのに、俺には不思議だ。そんな奴は、ここにはいくらでもいるし、

他人がどんな目をしていようが、構わんけどね」

「インド2は、根本的には何がいけないの。人を売らなければ幸せになれるの」

スタッフが肩をすくめた

シーハは冷や汗をかいた。今の質問は無難だと思うんだけど。

根本的には何がいけないの、なんて具体的に誰も責めてない。

必要なのは誰かをスケープゴートにして気晴らしをすることではなく、貧困と汚職を生む制度を知ることだ。

 

 

唐突に舞い込む、高カーストとの見合い。

なんてのに、サニーが、好奇心で応じることはあった。

ハア、だけど俺アノニマスなんですよ。

トランプがアメリカの国境を閉じた今、インド2のエンジニアに、未来があるのか。

「今まで通り、普通に仕事をしてもらえばいい。私たちのコネがあれば、アメリカに渡るのも大分有利になるよ」

目の前の没落貴族は言った。何だろう、こういう入れ知恵をした人がいたのだ、きっと。

例えばこんな感じで。

カースト信仰があるうちに、何か高値売りしておいた方がいいんじゃないですか」

「例えばどういうことよ」

「例えばMIT帰りのインテリなんかを見つけてきて、結婚したりするんですよ。

一族にグローバル・エリートを取り込む。

そうやって一族を強化していくんです。世界の潮目が変わったら、戦略を変えないと、一族は生きて行けない」

日本でも、華族の没落は早かった。

華族は、昔、武士とかやってた人のことだ。体制が変わったので、昔エリートだった人が、生きて行く糧がなくなって、転落してしまう。

21世紀の高カーストっていうのは、そういうことだ。

サニーは招かれた屋敷を見渡した。適度な古さがリアルだ。アンティーク家具っていうの、高いのか。

謎柄の布の貼った白い枠の付いたソファーの、木のきしむ音がした。

サニーはMIT帰りのインテリってほどじゃない、アメリカの小さな工科大学に留学していたことがあって、そこでアノニマスを知った。

サニーは目の前の没落貴族を、失礼に当たらない程度に品定めした。

サニーは、自分が信頼に値する人間かどうかなんて、サッパリわからなかった。

そもそもインドで信頼に値する人間の基準は曖昧だ。

カースト制度は、撤廃するべきか、ゆるやかに衰退させるべきか、放っておくべきか、公平を期するために相続税を100パーセントにするべきか。

そう、聞かれたらどうするか。

まず、相手の立場とイデオロギーを探らないといけないだろう。

正答は無い。が、答えを間違えたら、肥え溜めに落ちることもある。

だが、目の前の高カーストは、ペラペラと内情を明かした。

手持ちの札は、先祖大体の土地くらいしかなくて、それも相続税とかで没落していく。

インドの高カーストは大抵、政治と癒着し、何らかの特権を得ていて、引退モードなんだ、と。

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