ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

indian anonymous8


アンタら、イイ食い物が、欲しくないか。

ジャララバードのスラムの一角に人々が集まってきた。ここへ来て、金や食料が欲しくないか、とスラム民に誘いかける手合いには、いろんなのがいた。

奴隷商人から、慈善事業家まで。ほとんどのケースは前者だと知るのは、スラム住人の数少ない知恵だった。

だが、ソイツは確実に食い物をくれそうな雰囲気を出していて、現に彼の背後にはトラックがあった。

このトラックはもちろん、スラムの群衆に襲われて、奪われる可能性もあった。

だが、報復で警察が来て、この地区から人々を締め出す可能性もあったから、単細胞にトラックを略奪することの是非は、五分五分だ。

どこのスラムも人が溢れているから、場所争いだってラクじゃない。

「ラクな仕事だ。そのうち、ここに地上げ屋が来る。そうしたら黙って立ち退くのはよせ。俺たちを追い出すなと騒げ。そうしたらまた、食い物を持って来てやる」

群衆はザワついた。地上げ屋ってどんな奴だ。そいつが人を殺すような奴だったらどうする。角材を振り回してきたらどうする。

だが、イエスと答えておけば、今日のところは食料を貰える。

「何か身を守るものを、くれよ。いくらなんでも、丸腰じゃ、抵抗できない」

 

 

どうしてインド2は貧しいのか。

どうしたら人々の祈りは聞き届けられるのか。

シーハに質問されたマリアの涙のインド人スタッフは少し考えた。黄色いシャツの男だ。

貧しさと豊かさ。世界地図に載った全ての地区が、ケース・スタディだ。

経済成長に成功したところもあれば、失敗したところもあった。

「やる気じゃないの」

「随分、適当な答えね」

「だけどアンタはやる気がある。だから上手いメシが食えて、未来を託された。俺たちはただの慈善事業家じゃない、投資家だ。ここにいるのはそういう奴だ。そういうことだよ」

汚職政治家だって、やる気があることには違いなくない」

「シーハは大人しくしてるつもりみたいたが、やっぱり怖いよ」

「そんなに、私の目は怖いの」

このプロジェクトに絡み、何かの要件で来た黄シャツは、シーハに、怖い目をした姉ちゃんだ、と言ってきた。

あのCMの素材は、容姿が整っていて、目力のありそうな少女、という基準で選んだ。

それから、インタビューされてもボロがでないくらい、頭の回転の速い子だ。

シーハをメディアに紹介したのは彼だ。

「大丈夫だ。他の奴は気が付かない。

インド2に飢えてる奴はたくさんいる。大したことじゃない」

 

 

インターネットのニュースを見ると、ジャララバードのスラムから人を追い出すとか、追い出さないとかでモメていた。

出稼ぎ者などの寄り集まるスラムは、だいたい通勤や移動に便利なところへ出来るから、潜在的に一等地であることは多い。

アノニマス1たちは困惑した。

そういった追い出しを、アノニマスが煽ったと思われたら面倒くさい。貧民の敵とか言われたら厄介だ。

エンジニアが貧民の敵でないとは言い切れない。

俺たちは、どうして教育を受けられたか。

実家が裕福だった。たまたま才能があり、政府から奨学金を貰った。

左翼ならスラムの炊き出しに使う金を、俺たちは貰った。そこで既にエンジニアはスラム住人の敵だ。

スラムの連中には、コンピューターもコンドームも区別がつかない。

コンピューターの存在意義も、それでインド2を豊かになる可能性だって知らない。2者に共通言語は無かった。

スラムの住人はコンドームなんて買う金もないから、ネズミみたいに増えて行く。

それで豊かになるとか貧しくなるとかいう考えは埒外だ。

だからコンピューター・オタクの俺たち、スラム住人に、死ぬほど憎まれていたら、どうするよ。

窮地に陥った執念深い汚職政治家が俺たちの顔写真を見せて、スラム住人に暗殺でも頼んだら、俺たちは道を歩くだけでお陀仏だ。迂闊に買い物にも行けない。

「どうやって反対すんの。

アノニマスは情報を盗むのは得意だが、スラム街に盗む価値のある情報は転がってないよ。

ブルドーザーはどうやって追い出すんだ。さらにデカいブルドーザーをぶつけるのか。だけど俺たちはブルドーザーなんか扱えない」

「声明だけ出しとけば。いつも通り、テレビCMを出して」

「だけど出したからには、何らかのアクションを求められるだろ。口だけ野郎だと罵られるよ。インド2の貧民は怠惰だ。どこの貧民も怠惰だ」

「声明を出すだけでいいと思う。俺たちは、汚職屋の談合情報を出し抜き、バラしただけだ。土地ビジネスそのものには、手を出して無い。今回だって、それと同じだよ」

アノニマスたちは、事態を正当化した。スラムの騒ぎは、俺たちのせいじゃない。金の臭いに群がる連中が悪い。

広告を非表示にする