ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

indian anonymous16

 

「暴動を潰す?潰して何か良いことがあるのか。お前はいつも悪巧みをしてるって顔だ」

壁は、気になっていた女に話しかけられて動揺した。

シーハに側にはシャムがいたが、つい気が緩む。

「私がマリアの涙の手先だからよ。

アナタも暴動を潰せば外資NPOに恩が売れる。こんなところにいてもアナタに未来はないよ。アナタは何かになれる人よ。何かやりたいことはないの」

「ソイツはどうかな。そのNPOはお前を捨てたんだろう。アテになる感じはしないだろ」

「それなら、トラックで食糧を配りに来る人とは、どっちが信頼できる臭いがするの」

壁は考えた。トラックの食料は、暴動が済んだらもう来ないだろう。どっちにしたって、はした金で貧民を利用する商売人には違いない。

「インドのスラム住人は五万といる。1億人くらいいても不思議じゃない。衛生住宅が建って、そのうちの1000人くらいが救われたとして、何か意味があると思うか」

「意味なんかないよ。1億人を救うとか、インド2を救うとかいう人に限ってロクな人がいない。アナタは何か大きなことがしたくないの。少なくとも人助けが目的なら、今より救える人の数は増えるよ」

「やりたいことか。前に、ボームって奴が来た。土地で小銭が入った奴だ。ソイツは俺に仕事を持ちかけるだけ度胸があるよ。

見た目がこんな岩みたいな俺に話しかけてくるだけ、ソイツは度胸満点だ。

だがソイツの事業が成功する確率はサッパリだった。何の事業をやりたいかも、自分で分からないって告白してたからな」

ここで何をしたいかという面で、シーハはシャムより壁の方が近かった。スラム住人には、無用な野心を持っていた。

それはただ、壁が事業向けだっていうだけの話だ。

壁みたいな男は趣味じゃない。

シーハにとっては、いつでもシャムが騎士だった。

だけどシャムはお父さんだ。男じゃない。だけど、男って何なの。インド2に、マトモな男がいるの。

 

 

 

「イタチが失脚する?俺たちは別に良いですよ。奴の名刺を捨てればいいだけです。会いに行く前に分かってよかったです」

レイモンドとMBAホルダーとアノニマス1とサニーはこのところ、このソファーで話し合いをすることが増えていた。

MBAホルダーとアノニマス1は、無造作に汚いソファの方に座った。

ヨゴレ政治家と同じソファに腰を下ろさないとか、貴族のレイモンドと違い、今どきのエンジニアにそういう迷信は無い。

サニーはナノを同席させた。一族の運命や、一身上にかかわることを、妻に何も知らせないのは不実だ。

「むしろイタチの失脚に噛んで、その政治家に恩を売るってのはどうですか」

「ソイツは放っておいても失脚するんだろう。火中の栗なんか拾う必要はないだろう。お前は汚いケツを何度も舐めたりするのが趣味か。

ソレで何が得られるかも分からないのに」

横を見ると、サニーはナノと手をつないで話を聞いていた。

レイモンドはサニーを婿にして良かったと思った。俺たちは生き延びなければいけない。

 

 

 

シーハの持ってきた話は、荒唐無稽ではなかった。暴動を治めた恩をマリアの涙に売り、取引で、パソコンなんかを貰う。ビジネスチャンスって奴だ。

だが、壁のやってきたのは、ほとんどが口先の交渉だ。自分に文字が読めるかどうか、不明だった。

前に仕事のスカウトに来たボームって奴は、文字が読めると言っていた。ソイツも連れていくか。

「シーハは俺に興味がないんだろう」

「無いよ」

「そうか、だが俺が事業で成功したら」

「成功するかどうか分からないでしょう」

「それはアンタの持ってきた話の信ぴょう性を落とすよ。マリアの涙を利用してのし上がるのは、お前が持ってきた話だ」

「私は正直、誰を信頼したら何が上手く行き、誰が幸せになるか分からない。私にはアナタみたいな力が無い。私は誰も信頼できない。私はマリアの涙のスタッフの一部と、お父さんしか信頼してない」

シーハは初めて壁の目を見た。

今までは怖くて見られなかった。壁は力を持っていた。壁はスラムのボスだ。下働きをしていた幼いシーハを、薄汚れた目で物色していた、地主と同じ男だ。

「俺はシャムより力があるし、イイ男だ。だが、自分で言っても仕方がない。

俺は人を殺したり、無碍に扱ったことは無い。

だけど頼りにならないのは分かるよ。俺はただのスラム住人で、それ以上でも、それ以下でもない」

「マリアの涙にも、頼りにならないのはいるよ。たまたま先進国に生まれて、お金やコネや知識があるけど、裏で何をやってるのかわからない手合い」

「世の中にロクな奴がいない。ソレはそうだ。ロクな奴だと思ったら、ソイツは人を傷つけるのが怖くて、世間の片隅で小さくなってる、ただのチキンだ。

全く頼りにならない。シャムみたいな奴だよ。

インド2ってのはまだカースト制度の名残があって、電車で女を集団レイプしたり、家で女を殴ったりするのが普通だ。

誰について言っても、アンタの幸せは保障されない。

それは分かる。それは俺だって同じだ」

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