ちきうアネクドート

仕様でどうしても消せないが、リンク先の婚活業者はココとは無関係です。

indian anonymous19

 


イタチが訪れた警察署長の顔は変わっていた。あまり見ない顔だ。

彼はイタチに紅茶を出し、一通り聞くと静かに笑った。

「ご苦労だったな。ウチはマリアの涙とは付き合いが深い。そのアノニマスとやらは返してやろう。ただ、代わりにお前の身柄を貰うよ」

来るものが来たという感じだ。ただ、ここで来るとは思ってなかった。マリアの涙に恩を売って生き延びようとしたことが、思いっきり裏目に出た。

だが、こんな見ず知らずの野郎にお前呼ばわりされるとは、俺も落ちたもんだ。

「罪状は何なんですか」

ヤボな質問だった。不正な土地ころがしから、邪魔な奴をマフィアに頼んで消して貰ったことまで、イタチの不正行為は、自分で覚えてるだけでも10本の指を下らない。

ただインド2の警察は予算不足で、そんなこといちいち記録に残してない

イタチは不正の塊だという噂が、流布しているに過ぎない。イタチはその状況を把握していた。

「正直、俺らも調べるのは面倒くさい。ただ調べれば何かがでてくるのは間違いない。アンタの身辺で聞き込みすれば一発だ」

「だけど、そういうときに得点を上げようと思って、吹く奴は大勢いるよ」

「別に得点なんかやらないよ。だいたい得点って何だよ。俺らは政治家じゃないんだ。

ラクな現業に取り立てたり、オイタをもみ消したりか。俺たちは、いちいち嘘つきの顔を覚えているほど、暇じゃないんだ」

「得点がなくたって、俺を恨んでるやつは大勢いる」

「最近はDNA鑑定なんて高級なものもあるよ。自首ってのは罪を軽くする。

こっちは金も暇も無いし、何から何まで調べ上げようなんてつもりはない。アンタの罪状を全部洗っていたら、アンタは22世紀になっても牢屋から出られんよ」

 

 

「学校や役所にコンピューターを普及させる?普通過ぎないですか」

MBAホルダーは役人の前で眉をひそめた。

彼は、いきなり貧民の前で演説して、熱狂をさらう自信はない。勝手に選挙スタッフにされたサニーやアノニマス連中が、横に座っていた。

彼らはモヤシのエリートで、スラムのことなんて何1つ知らない。ひとまず役人連中なんかに助言を仰いで味方につけたほうが、得策だ。

「政治家のやることは、だいたい普通だろう。そんな奇抜な政策ってのは無い。現にウケ狙いの100階建ての衛生住宅がコケたばかりだ」

「勝算はあるんですか」

「さあ、教科書代を節約したり、生活保護物資の不正受給を無くして、マフィアの中抜きとかも無くすんだろう」

隣の役人が言った。

「イタチみたいな野郎が、コンピューター云々言っても頭が悪そうなだけだが、

欧米帰りで、何でも使いこなすアンタらがいえば説得力があるよ。

それでお前らの後輩の神童みたいな奴を、宣伝に使ったらいい」

インド2では既に、実験区で生体認証の身分確認やID制カードが実施されていた。

だが金がないので、全国に広げるところまではとてもいかない。

「ソレは自前でやるんですか、外資が入るんですか」

「当面外資から金を借りるしかないんじゃないか。エンジニアはインド2のエンジニアを使って貰いたいが。

だいたいアメリカってのは何なのか。手に職を付ける為に大金を払ったのに、追い出されて何の仕事もないんじゃあ、誰もお宅に留学なんかしないよ、と文句を言っておいたよ」

「詐欺師じゃないですかって聞いたんですか」

「アンタは、アメリカにカモられたと思ってるか」

「俺にも分かりません。インド2ってのは何でこうなのか。世界は何でこうなのか」

 

 

スラム街に下水道が敷かれることになった。

費用は、役所とマリアの涙の折衝だ。

マリアの涙はその実績を内外へPRし、募金を集めたり、政治家連中は、選挙民の支援を取り付けたりする。

スラムは汚くない方が良い。観光客は来るし、オフィス街に隣接していた。

「彼らは、働くのかね」

スタッフの1人が、壁に素朴な疑問をぶつけた。

「元々、働くために都心へ来た人たちだよ」

元々スラム住人の目は死んでない。死んでなかったはずだ。だが、人口過剰で、仕事はなかなか入らない。

景気が悪くなれば、工事現場の仕事なんか、ほとんどなくなった。

それ自体は、彼らのどうしようもないことだ。やがて諦めが人々を支配し始める。

壁はそうならない為にいつも動いてきた。暴徒のケンカの仲裁をしたり、ハタ目には無駄なことばかりやっていた。

 

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