隠居生活

最新の投稿は、読書中です。目次、2004年:メディア、2005年:生活雑貨、2006年:宗教、2007年:街と散歩、、2008年:音楽、2009年:、2010年:健康と自己管理、2012年:世界情勢、2013年:社会、2014年:経済と企業、2015年:ファッション、2016年:政治、2017年ー2021年:ブログ、2022年以降:本の感想。

イラク水滸伝

イラク水滸伝 (文春e-book)
高野 秀行
2023-07-26
世界史の中でも、湿地帯はよく反政府主義者や無法者の溜まり場になってきました。中国の水滸伝が有名です。砂漠のイラクにも、湿原地帯があります。
フセイン時代に水路を止められて、住人が流出していましたが、フセイン政権が崩壊してからは、元通りになっているようです。
日本に住んでいるイラク人から現地語を学んでいきますが、紛争が続いているため、身元を明かしたがらなかったり、同じイラク人には会いたがらなかったりしたそうです。
 
イスラム教のシーア派の国は、イランとイラクウズベキスタンなど少数派です。イランの人々は本音と建前で、厳しいイスラムの規則をあまり守りませんが、イラクではシーア派が政権に増えてから、厳しいイスラム主義になってきています。女性の家族は、客人の前に姿を見せません。フセイン時代のほうが、ベールなどをつけないで生活しても平気でした。
 
アメリカが撤退してからも、警察力などは弱く、民兵がいます。氏族で力を合わせる傾向があります。
イラクは崩壊していると思われがちですが、教育水準なども高かったのか、技官などもしっかりしています。客人には過剰なもてなしをします。
 
湿地帯は移動はボートなどですが、見晴らしが悪く、方向感覚も掴みにくいそうです。
上流のトルコやイランにダムなどができて、水の量が減り、湿地帯は無くなる可能性もあります。
湿地には、漁をしている人や、水牛を飼っている人がいます。漁と水牛の飼育は、循環型の環境になっています。
 
アラブやアフリカには遊牧民が多く、氏族があることが多いです。政府は弱く、氏族が助け合って生きる伝統があります。
アラブには、氏族の長のシェイフがいることが多いです。
 
湿地の民は、都市から逃げ込み、反政府活動をしている事が多かったです。
共産主義者なども多かったようです。
イラクは、オスマントルコから見れば僻地でした。
中央で文明が起こって滅びる間も、湿地の自立した社会は細々と続いていきました。シュメールの伝統を汲んでいると自称しています。
 
マーシュアラブ布、アザールという、世界的に有名な鮮やかな刺繍の布があります。
湿地民はいい兵士で、民兵によく勧誘されているようです。海外への流出も続いています。イラクを支配している厳格なイスラム教も、侵食してきています。イラクに住んでいたユダヤ人のように、湿地の民も散逸する可能性があります。